晴れていれば、風がよく吹けば発電するが、雨が降ったら、無風ならほとんど発電しない――再生可能エネルギーの多くは、自然環境によって出力が大きく変動するという欠点をもっています。
しかし、雨が降ったらもう閉店する、というわけにはいかない。再生可能エネルギーを活用するには、ある程度の電力プールが必須です。晴れた日に電力プールに蓄電し、雨が降ったら、それを取り崩す。すなわち、出力の平均化のために、電力をバッテリにためておきたいわけです。再生可能エネルギーを自家消費するなら、必須といってもいいでしょう。 ここでもういちど、バッテリ比較表を見てください。
リチウムイオン | CFB | 鉛 | |
放電性能 | 3C | 8C | 1C |
充電性能 | 3C | 2C | 0.5C |
充電サイクル | 3000-10000回 | 3600-13500回 | 300-4000回 |
エネルギー密度 | 120Wh/kg | 40Wh/kg | 20Wh/kg |
充放電温度 | -10~40℃ | -40~60℃ | 0~40℃ |
自己放電 | 小 | 小 | 大 |
放電放置 | 可 | 可 | 不可 |
BMS | 必要 | 不要 | 制御依存 |
故障時対応 | モジュール交換 | 部分セル交換 | 部分セル交換 |
電力プールにはリチウムイオン電池がよく使われているのですが、CFBと比べると、以下の欠点があることがわかります。
- 大電流を流せない
- 寒冷地域では性能を発揮できない
- BMSがなければ火災の危険があり、そのため、部分的な交換をすることができない(全交換になる)
もちろん、エネルギー密度の高さから、スペースの余裕のないところでは、リチウムイオン電池が活躍します。しかし、再生可能エネルギーを設置できるようなところなら、CFBで電力プールを構成するほうが有利です。初期コストも、ランニングコストも安く、寒冷地でも問題ない。そして大電流を出力できるからです。
CFBの利点から、少しずつですが、日本でもCFBを電力プールのユニットに選択する例が増えています。
電力プールの構成
納入事例紹介で随時ご紹介していきますが、すでにCFB電力プールが日本でも稼働を始めています。当社の電力プールシステムの概要は以下の通りです。
- 複数台のCFB(台数は必要な容量によって設計)
- CFB1台1台にとりつけるモニター装置
- モニターからの情報をとりまとめる制御装置
これを多くの場合は、コンテナの中に設置します。制御装置はインターネットにもつながっており、遠隔モニターが可能です。
圧倒的に安いコスト
CFB電力プールの、リチウムイオン電力プールに対する優位性は4点あります。第一は、安全であること。基本的に発火の心配がありません(配線を間違えて、極性を逆にした場合のみ危険)。今後は、再生可能エネルギーの電力プールを住宅に設置することも増えるでしょうから、安全性は重要な点です。
第二は、イニシャルコストが安いことです。鉛電池はリチウムのような稀少資源を使いませんし、自動車という大量需要先があるため、価格がこなれています。CFBも例外ではなく、バッテリの中では安価な部類に入ります。
さらに、リチウムイオン電池の場合、特定のセルに充電が集中すると発火する危険があるため、 BMS(Battery Management System)が必須です。このBMSのコストが高く、数百万円することはザラ。一方、CFBによる電力プールなら、BMSも不要です。
第三は、メンテナンスコストが安いことです。リチウムイオン電池の場合、BMSを組み合わせたシステムとなっているため、特定のセルに不具合があったとしても、部分交換ができません(全交換しないと安全性を保てない)。
CFBなら、遠隔モニターで検出された「調子の悪いCFB」のみを交換するだけで、メンテナンスが終わります。交換作業はクルマのバッテリ交換と基本的には同じでとても容易。大規模な電力プールでも、維持にかかるメンテナンスコストを安くすませることが可能です。
そして最後に、低温環境でも能力を発揮できることです。CFBなら、マイナス40℃まで正常動作します。リチウムイオン電池もニッケル水素電池も通常の鉛電池も、こうした低温下では性能が出ません。冬に零下まで気温がさがる地域での電力プールなら、現状、選択肢はCFBしかないといっても過言ではないのです。
もちろん、いいことばかりではありません。リチウムイオン電池に比べると、CFBのエネルギー密度は1/3です。これはすなわち、同じ容量を蓄電するのに、3倍の重さとなることを示しています。体積も大きい。スペースに余裕がない場合や、重いと困る場合は、CFBは候補から外れることでしょう。
EVの急速充電用途にも有望
再生可能エネルギーの出力平準化が、電力プールの主な利用法ですが、それ以外にも活躍できる場があります。それが、EVへの急速充電用途です。
現状、EVの急速充電器を複数台設置できているところは、ほとんどありません。これは、電力契約と関係があります。複数台設置しても、それをまかなえるだけの電力契約をしていなければ、充電はできないからです。
この限界を破るには、EV急速充電用電力プールを設置し、深夜など充電需要のあまりないときに電力を貯め、昼間はEVに電力プールからイッキに充電するというやり方が有効です。これなら充電器を複数台設置することも可能ですし、1台の充電にかかる時間も短縮できる可能性があります。
この分野では、株式会社エネルギー応用技術研究所が「電力貯蔵式EV急速充電」という特許を取得しています。いったん電力プールに直流で貯蔵した電力を、EVに送り込むという内容の特許です。
CFB電力プールは電力貯蔵式のEV急速充電に最適。寒冷地でも性能を発揮しますし、火災の心配も不要ですから、今後、需要を増やすことが予想されます。
最大の利点は安全性
電力プールは、どのバッテリを使っても、大規模な設備になります。CFBを電力プールに用いることの最大の利点は、安全性です。
リチウムイオン電池はすばらしい性能をもっていますが、爆発したり、発火したりする可能性のあるバッテリです。電力プールに用いる場合、留意しなくてはならないのはセル単位での充電管理で、特定のセルに過剰な電流が入力されると、発火したり、爆発したりという危険があります。
それを防ぐために、リチウムイオン電池はバッテリマネジメントシステム(Battery Management System=BMS)を組み合わせることが必須です。すべてのセルに均等に充電できるように管理する回路です。
すなわち、リチウムイオン電池は、セルとBMSとのセットで実用化されているバッテリです。それゆえに、一部が消耗してダメになったとしても、部分交換もできません。BMSと組み合わせたセットをまるごと交換するほかなく、メンテナンスコストがきわめて高くなります。
今後、再生可能エネルギーの自家消費が一般的になってくると、電力プールを各家庭が備えることも増えるでしょう。リチウムイオン電池タイプだと、性能はいいけれど、火事の危険があり、初期コストもメンテナンスコストも高価。CFBタイプだと、性能はリチウムイオン電池タイプに劣るけれども、火事の心配がなく、初期コストもメンテナンスコストも安価です。
カスタマイズ受注いたします
当社はすでにCFBの複数台をコンテナに実装した大規模電力プールの納入実績が複数あります。ご相談はコンタクトフォームよりお申込みください。規模によって最適なシステムにカスタマイズして納入いたします。