鉛電池は自動車のエンジン始動用に使われている、おなじみのバッテリです。リチウムイオン電池が脚光を浴び、全固体電池が話題になっているいま、鉛電池はもうレガシー(時代遅れ)な技術で、もう活躍の場はないように思うかもしれません。

キャタピラーが改良

しかし、鉛電池も捨てたものではないのです。なにより安全です。これまで、活用の場が自動車以外に広まらなかったのは、大きな欠点があったからです。それが、扱いにくさでした。

鉛電池には、1)自己放電が大きい、2)完全放電すると電極がダメになり、使えなくなる(サルフェーション現象)という二つの欠点がありました。この欠点を解消することに取り組んだのが、米国キャタピラー社です。その結果、電極にカーボンフォームを使うカーボンフォームバッテリ(Carbon Foam Battery)が誕生しました。この開発によって、劇的に鉛電池が扱いやすくなったのです。

キャタピラーが改良に取り組んだきっかけは、南極大陸での仕事でした。夏が終わると作業ができる環境ではなくなるため、重機を放置したまま帰国します。そして9か月後、再び南極に戻ると、必ずバッテリがだめになっている。上の二つの欠点ゆえです。

firefly Carbon Foam Battery(アメリカ向けの製品タイプ)

鉛電池の再発見

キャタピラーの研究者たちは、電極にナノカーボン素材を使うことで、自己放電を小さくし、サルフェーションを抑止することに成功しました。それだけでなく、次の特徴も得られたのです。

  • マイナス40℃までの低温下でも能力を発揮する
  • 大電流を流せる
  • 急速充電ができる

その上、従来型のバッテリに比べて、エネルギー密度も大きくなりました。CFBの性能をみれば、レガシーな技術だと思い込んでいた鉛電池を再発見することでしょう。比較表をご覧ください。

リチウムイオンCFB
放電性能3C8C1C
充電性能3C2C0.5C
充電サイクル3000-10000回3600-13500回300-4000回
エネルギー密度120Wh/kg40Wh/kg20Wh/kg
充放電温度-10~40℃-40~60℃0~40℃
自己放電
放電放置不可
BMS必要不要制御依存
故障時対応モジュール交換部分セル交換部分セル交換

エネルギー密度ではリチウムイオン電池の圧勝ですが、放電性能はCFBの圧勝、寿命(充電サイクル)も長く、マイナス40℃でも動作する。そして自己放電が少なく、放置しても問題ない。どうです? まだまだ「行ける」でしょう。

たとえば、自動車分野です。エネルギー密度が既存鉛電池の倍ありますから、CFBに変更するだけで、kg単位の軽量化ができる(半分の重さで同じ性能)。北海道のような寒冷地でも性能を発揮しますし、なにより流通在庫のまま時間がたっても、ほとんど放電しません。当然、使えなくなることもない。

三つの用途でとくに有望

CFBは、鉛電池の欠点ゆえに、悩みの大きかった場面を救います。

第一は、寒冷地での利用です。スキー場で、あっという間にスマートフォンが使えなくなる経験をした人も多いでしょう。 リチウムイオン電池を含め、多くのバッテリは寒冷だと性能を発揮できません。 CFBはマイナス40度まで、性能を発揮できます。

第二は、農機のような、アイドルタイムの長い機材での利用です。稲刈り機などは、稲刈りが終わると用済みで、翌年まで動かさない。既存バッテリは、その間に放電しきってしまい、サルフェーション現象を起こしてしまいますが、CFBなら大丈夫。放置したままでも、翌年はしっかりエンジンを始動します。

そして第三は、太陽光発電パネルなどと組み合わせての、電力プールへの利用です。現在はリチウムイオン電池がよく使われていますが、CFBのほうが、はるかに向いている分野です。

Firefly Energy Co.が開発・生産

キャタピラはCFBの開発に20年の歳月を要しました。しかし、完成後、生産コストの問題に悩むことになります。カーボンフォーム電極が高価だったのです。

この問題を解決し、カーボンフォーム電極のコストダウンに成功したのがFirefly Energy株式会社で、キャタピラからこの事業を買収し、研究開発をイリノイで継続しながら、インドの工場でCFBを生産しています。

当社(CFBジャパン)は、Firefly Energyと契約し、ワールドワイドにCFBを販売しています。

Firefly Energyのウェブページ
http://fireflyenergy.com/